5、就労を目標に置いた学校教育におけるキャリア教育と特別支援教育の現状
高等部の在籍生も含め医療機関でLDやADHD、自閉症スペクトラム障害の診断を受けたお子様方や、通常学級や特別支援学級の情緒クラスでまだ診断を受けていないお子様方にも療育手帳が取得できないお子様方がたくさんいます。発達障害を心配するお子様の保護者には、お子様の将来の就労を心配するあまり無理をして療育手帳を取得して特別支援学校の職業科の受験をお考えになっていた在籍生も少なくないでしょう。
今まで発達障害がある高等学校への進学者に関しては、特別支援教育のみならず、就職指導が進められていなかった現状があります。昨年、制度化が実施された状況を踏まえると、少なからず今までよりは前進したことは間違いないですが、就労に至る道のりは相当高いハードルがあるように思えます。義務教育課程における特別支援教育の現状と同じように、一人ひとりのニーズにあった支援には時間がかかるものと思えます。ましてや、自然学園が創立以来取り組んでいる発達障害があるお子様の自立に向けた就労支援がすぐに実現できるとは思えません。本校でも、企業に在籍生徒が抱える障害を理解していただき、体験就労の実施や採用までの関係に至る道のりは時間がかかるものでした。企業が要求するスキルや、実習を通して判明した就労に必要なスキルを授業カリキュラムに落とし込み、課外活動も含む学校行事や職業実習を通した体験的な学習で般化するためのソーシャル・スキル・トレーニングを自然学園高等部では創立当初から実践しています。
日本では、松為先生の著書にも記されているように、2011年1月に中央教育審議会がまとめた「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育のあり方について」が答申されました。1980年代後半からキャリア教育が提唱され、1998年から文部科学省主導でキャリア教育の取り組みが普通校にとどまらず、特別支援学校においても開始されました。キャリア教育のプログラムは、幼児期から青年期あるいは高等学校に至るまでの体系的な学習支援を通して、子どもが生涯にわたり社会人、職業人としてキャリアを形成していくための基盤を作ることを目指しています。キャリア教育は発達障害のお子様の場合、より綿密に、丁寧に行わなければいけません。発達障害があるお子様とそうでないお子様との違いは、働き、生活していくうえでの困難さをより強く感じるかどうかにあります。認知や不注意性、不器用性、人間関係におけるつまずきから注意を受けることが多くなり、自信を失い、退職に結びついてしまうことも珍しくありません。そのため、保護者と一緒に本人も自分の特性を理解し、その改善に努め、企業に自分のつまずきに対する合理的配慮を申し入れることができるスキルが必要とされてきます。それができれば、働き、生活していくうえでの多少の困難さがあったとしても、自分に合った将来を設計し、必ず充実した、満足のいく人生を送ることができるでしょう。そのためには、障害の告知や障害者手帳の取得は、彼らにとって必要不可欠なことになるはずです。保護者の方々が頭を悩ませている上記のようなことに対して、少しでも今回の定期講演会が参考になればうれしい限りです。ぜひ保護者の皆さんのご参加をお持ちしています。