高等部:高等部通信11月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-6

7、第17回『思いやり収穫祭』特別企画特別講演会『不登校からの脱却』のお知らせ

今年の『思いやり収穫祭』の特別講演会は11月2日(日)の午後2時から自然学園の校舎にて、卒業生との対談を織り交ぜながら、現在の社会問題にもなっている不登校の増加に関する問題を考えていきたいと思っています。

不登校生が多くなっていることは度々お話しさせていただいていますが、その理由の大半に「不安・無気力」が挙げられています。「いじめ」「人間関係のトラブル」や「学力不振」「提出物が出せない」「教員との問題」等の明確な理由がない不登校の場合は、統計上の理由として「不安・無気力」になってしまうケースが多いようです。併記した理由の積み重ねが気持ちの変化に繋がり、行きたくないと自分の気持ちが判断した時はもう引き返せないような思いが強くなってしまうのではないかと考えています。

不登校を経験している生徒の半数近くは90日以上と長期化している不登校生であることも、二次的なつまずきに陥って悩んでいる発達障害がある生徒と重ねて考えてしまいます。よく不登校といじめとの関連性が取り上げられますが、不登校のきっかけとされる要因は「いじめを除く友人関係の問題」「学業不振」が圧倒的です。もちろん学校や教員側がいじめを認知していたかの問題はあると思いますが、「いじめを除く友人関係の問題」の背景にあることは、その問題を解決するためのコミュニケーション力の欠如や相手の気持ちを読み取るスキルなど、対人的な能力の希薄さに原因があるように思っています。そして、自己肯定感が持てない気持ちが他者との距離感を大きくし、クラスに自分の居場所を感じられなくなってしまうからではないでしょうか。そのことからくる不安や他者に対する劣等感が情緒の混乱に結びつき、不登校が長期化します。強い不安からくる情緒の混乱には発達障害の2次障害といわれる精神疾患である拒食・過食、不眠、強迫性障害なども含まれています。

生徒の皆さんは、どちらかというと人の気持ちを読み取ることが苦手な人たちです。クラスメートからは自分勝手でわがままだと誤解されている人もいるでしょう。人の気持ちを読めない能力には、生まれながらにもっている性格やつまずきとされる特性も起因していることは事実ですが、それだけではありません。自分自身に自信がなくてコンプレックスが強く、自己肯定感が低い人たちは、その裏返しとして自己主張の強さや他者への攻撃性が、自分の気付かないところで強くなります。だから、新しい環境で不安を抱えている人ほど、なんとか人に認められようと思って肩に力が入って頑張りすぎてしまうのです。そのような行動が他者から見ると、去勢を張っているように見えたり、強引で我儘そうな嫌な人に映ったりしてしまいます。このようなことがいじめや人間関係のトラブルのきっかけとなるのです。不安や緊張感の強さは問題行動を引き起こす引き金になりやすいのです。

自然学園に在籍しているお子様を考えると、入学前から椅子にちゃんと座れずに、絶えず横向きに足が机からはみ出しておしゃべりが止まらず、貧乏ゆすりが多く、継続して先生の話を聞くことや課題に集中して取り組むことが苦手なので、結果的に授業妨害になってしまっているお子様が多いのではないかと思っています。このようなお子様は周りからは「落ち着きがない子」「勉強ができない子」とレッテルを貼られがちです。当然先生からも注意される対象になっているので徐々にクラスメートからも浮いたような存在になりクラスに居場所がなくなっているような疎外感を感じてしまうことがあると「不安・無気力」感から苛まれるようになり、自分でも無意識に学校に行くことが辛くなってしまうことが考えられます。

「落ち着きがない子」と言われるような一般的にADHDの傾向がみられるお子様は、先述したような特徴が見られます。他のお子様に比べかなり活動的でもあるので、思ったことをそのまま口にして授業中に先生の説明を遮ってしまったり、クラスメートの発言を中断させてしまったりして授業の進行の妨げになっていることさえ自分では気付けないお子様が多いのです。また、気持ちが持続できずに学習課題に集中しなければいけない場面で別のことに気がとられてしまい、授業とは無関係なことに取り組みだしてしまうような問題行動の多さもよく見受けられる光景です。

このような傾向のお子様にみられる共通した課題は抑制する力が弱いということです。抑制とは、不適切な行動を考え、発言をコントロールする能力です。これにはワーキングメモリの弱さも関係していると言われ、行動を抑制するために自分で注意を払わなくてはいけない課題を忘れてしまい、すべき行動を見失ってしまうのです。それによって注意されることは十分承知している問題行動でも繰り返してしまうのです。また、やるべき行動の優先順位をつけられないことも特性としてあるので、どうしてもやらなくてもいい行動をやるべき行動より優先してしまい、結果的に同じ失敗を繰り返す結果になることもあるでしょう。

「お勉強ができない子」は、ワーキングメモリと言われる学習の基礎となる情報を処理するための能力である認知的スキルが問題になって学習でのつまずきを生じているケースが考えられるのです。

発達障害の子どもは視覚的な情報が得やすいタイプが多く、目で見て理解することが得意です。反対に、目で見て見えないものを理解することが苦手で、話し言葉も理解することが苦手なタイプが多くいます。周りの子が普通にできることができず、問題行動につながるケースも少なくありません。未学習でできないことも多いものです。この場合、彼らの特性を把握して、彼らがわかるように伝え、正しい行動を教えてあげることが大切になります。

先述したようなことがきっかけで不登校になった卒業生が、入学後の経験を踏まえながらどのように不登校を乗り越えられたのかを卒業生に話をしてもらうことでその理論をお聞きいただく機会になると考えています。今回参加していただく演者は現在、一般就労において企業で活躍している自然学園の卒業生です。発達障害の診断があり、小学校、中学校時代に不登校を経験しています。不登校になってしまった経緯と発達障害の特性、それらの関連性や、いじめや人間関係のトラブル、学力不振などの学校生活おける困難さなどについての経験談をお聞きしながら、現在に至る経緯、立ち直りのきっかけをお話しいただく予定です。少しでも、現在不登校や行き渋りを経験して将来的な不安や絶望感を感じ将来を悲観している人たちや、進路や進学に対する不安を感じている人たちに勇気や希望を送り届けられたらと考えたコンセプトです。一般就労や通信制高校に関する疑問や関心がある方も是非ご参加ください。

 

8、おわりに

2学期のような学校行事が多い時期には、子どもたちも緊張する場面が多くなりがちです。低気圧もストレスを強める要因と言われています。まして、体育祭などは、感覚統合の問題や認知のつまずきがあるお子様には、非常にストレスが強まる行事になります。このような時期に人間関係のトラブルなどが重なることによって不安が強くなり、情緒の混乱を生じ、不登校やパニックなどに結びついてくることは珍しいことではありません。高等部のお子様方は、前期試験の結果が出て一喜一憂している人が多いでしょう。今回思うような得点をとれなかった人たちも後期試験につながるよう原因を把握して、学習計画を見直しましょう。自信を無くすことで無気力や不安につながることがないように細心の注意が必要です。

2学期は、「体育祭」、「思いやり収穫祭」、「芸術文化鑑賞会」、そして最後に「クリスマス会」と学校行事がとても多く予定されています。皆さんは学校行事の趣旨をよく理解して、体躯債でも常に全体を意識しながらお互いにコミュニケーションをとって連携し合いながら、指示をよく聞き、周りに合わせながら一生懸命参加することができていました。台風や気温の寒暖差が激しい天候で身体的にも精神的にコントロールしにくかった人もいたと思いますが、大きなトラブルも起きずに楽しく学校行事に向かい合っていた印象があります。3年生は就職に向けての企業実習で非常に忙しく過ごしている人たちが多いことでしょう。今、採用を前提とした実習や対策に臨んでいる人たちは、決して慌てることなく、今まで練習した通りのことを本番でできれば問題ありません。等身大の自分自身を受け入れてもらえるだけの実力があなた方には備わっています。あとは今日まで自然学園で学び続けてこられた自分自身に自信を持ってください。2学期も残りわずかになりましたが、最後まで気を抜かず学園祭や芸術文化鑑賞会の準備に励んでください。

自然学園学園長 小林浩