バンブー教室:バンブーだより10月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-2

2,自然学園第20回定期講演会の報告と発達障害者の一般就労の現状

9月7日 10時開演 春日部市役所の陽だまりホール

「発達障害の子どもと生きる」

~発達障害の特性を生かして働くための家庭でのキャリア教育~

講演 松為信雄 先生

9月7日の午前10時から春日部市役所の陽だまりホールにて、東京通信大学名誉教の松為信雄先生による定期講演会がありました。現代のキャリアの考え方では『進路選択は「汽車に乗せる」から「自動車を運転」の時代になっている』こと。自分でエンジンをかけながら(動機づけながら)、道路を自分で探してゆく(自己決定してゆく)ことが求められていることを話されていました。そして、車のオーナーは自分自身であるとのことです。自分の将来的な進路や夢は両親など身近な第三者が決めることではなく自分で考え決めていかなければいけません。自己決定のプロセスが重要であり、自分で選んだ進路や職場において多くの充実感・達成感が生まれ、その結果、自己有用感・肯定感が育まれ、将来への展望となることをお話ししてくれました。

現実的な問題として合理的配慮は企業に義務付けられてはいますが、上記した自己有用感・肯定感が育まれ定着する職場を選ぶのであれば、配慮がある職場を選ぶより、配慮が少なくても自分の適性を活かせる職場選びが必須になります。自己の特性やスキルをプロファイルしながら、」できる仕事を選択し、実際に経験しながらその選択が適正かどうかを見直し、自分のプロファイルに適合する職務設計を進めることが能力の個人差が多い発達障害傾向の人たちには重要で、その過程を自分で試行錯誤しながら自分自身で決定し、自分のキャリアに責任を持つことが何よりも優先するキャリアの考え方であるとお話しされています。

実際に障害者就労での人材を多く採用されている特例子会社であっても、普通就労で採用されている親会社からの出向している人たちは一定数を占めています。当然業務に対する特別扱いは期待できません。特別支援学校など少人数で教員の数も多く、手厚く指導を受けられていた環境から職場では一転する訳です。

最近、何社かの大手企業の特例子会社の社長・部長クラスの管理職の方々をはじめ、人材開発や人事、研修担当の部署の方々がわざわざ弊校にお越しになってくださいました。卒業生の就職実績が前提になり、本校からの卒業生に対してかなり高い評価をしていただいていることが改めてわかりました。今後の連携の強化も含めて授業見学と今後の採用の打ち合わせにわざわざ足を運んでくださいました。

来年の7月の障害者雇用促進法による法定雇用率が2.5%から2.7%に改訂されることに伴い、従業員の40人に1人の障害者の採用が37.5人に1人の採用に義務化されます。精神障害者は2019年に正式に障害者雇用の対象になりました。2005年に発達障害者支援法が施行され発達障害者の雇用は伸びていきましたが、現在では毎年のハローワークを通じての採用率は精神障害者が障害者雇用の半数を超え、雇用の主役になっています。

このような現状を背景に、採用活動においては特別支援学校からの人材より通信制高校からの人材に注目が集まっています。今までの障害者就労が認識されていた業務内容としては、知的なつまずきがある人たちでも業務の遂行がしやすいように、軽作業のラインなどの単純なルーティーンの業務が主流でした。作業をマニュアル化でき、業務の手順が管理しやすいような繰り返しの労働が課せられていました。発達障害であるADHD傾向の人たちは、多動的な傾向があるので単純な繰り返しの業務は苦手です。現在は、ある程度の自己決定力に業務を委ねて効率的なグループワークでの業務が推進されています。与えられた仕事をこなすだけではなく、業績になる仕事を自ら創出していく積極性やアイディアが彼らには期待されているのです。

現実問題としてキャリアを積みながら豊かな人生を歩むことは偶然性が大きく左右します。初めての職場で任された業務や人間関係の積み重ねが、自分のやりがいがある適職を見つけるもっと確かなプロセスであり、一つひとつ経験を前向きな努力で乗り越えた足跡が社会人として成長し、個人のスキルを育むことに繋がります。もう保護者が彼らのキャリアの道を拓き、レールに乗せて人生を共に歩むことは不可能です。そのような時代ではないのです。

自分の意志でキャリアを重ね、その中で適職を見つけることが何よりも確実なキャリアアップの方法なのです。そのために、その場に応じたケーススタディを経て、自らのスキルや業務の効率化を図りながらより業績を上げるための工夫が障害者雇用でも現在は求められるスキルなのです。出退勤の自己管理や一人で交通機関を乗り継いで出社できる能力、ATMで給料を引き出せる能力は、働くための基本能力として企業実習から当たり前のように求められる生活スキルです。

そのために家庭でのキャリア教育が重要になってきます。自分のことは自分でできる大人にするためには、自己決定力を養うことがキャリア教育の根幹であり、日頃から子どもに役割を与え、その訓練を実践していく具体的な施策をお話ししていただきました。今日のためにわざわざ資料をご用意いただき誠にありがとうございました。現場感覚にぴったり寄り添った素晴らしい講演内容でした。定期講演会の報告も兼ねて、発達障害がある子どもたちの就労の現状とそのキャリアに育むために必要な支援を記述させていただきました。