バンブー教室:バンブーだより9月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-5

視覚からの短期の記憶をワーキングメモリ(視空間的短期記憶)と言います。計算や文章題はこの記憶を長期の記憶に頭の中で移し、かずの繰り上りや繰り下がりを計算していく処理が必要となります。算数が苦手な人はこのワーキングメモリが弱いため計算に苦慮します。「かず」を数えることに苦労して自然に数が数えられないので、数の順番や大きさを認識するためには数直線などの視覚的な手がかりが必須になります。それでは「かず」を数えることが自然にできません。これができないとワーキングメモリに負担がかかり、「1」と「いち」、「2」と「に」が結び付かないので文章題が解けないのです。そして文章題を解法するには「推論すること」が必要になってきます。文章題で書かれた文を読んで言語的な世界をイメージの世界に置き換える処理を必要とします。数字や記号、文章に記された対象物などを操作して数式に置き換える感覚が求められるのです。WISCの補助指標として「算数」の下位検査を行うのはこのような能力を図るためです。

文章読解は、文章を読んで、短い段落ごとに書かれている事柄を把握して、その関係性から文章構成を理解する練習が必要になります。物語文なら主人公の気持ちの移り変わりや登場人物との関係性、登場人物の社会的な立ち位置やその役割、性格、過去の出来事などの内容は、時制を踏まえて整理しながら読み進めることが求められてきます。論説文なら文章を読んで筆者の考えを、文章に用いた意図する言葉の意味と文脈とを重なりを合わせながら、段落ごとに読み解いて文章全体の構成や序論・本論・結論などの文章の構成を読み解くことが求められていきます。

文章読解は視空間ワーキングメモリより、言語領域のワーキングメモリが極端に低いことが苦手さの要因として考えられます。漢字のかたちや語彙の文字を視覚から判断する能力より、漢字や語彙の音やその意味の理解が弱いことで文章の意味がとらえきれず、文脈が読み取れないことがあると思います。その場合は、漢字に読み仮名を明記し、語彙の意味カードを文章のそばに添えながら読み進めることが必要になるでしょう。また、物語文ならば先に話した主人公の気持ちの変化を時制や段落ごとにまとめ、登場人物との関係性や登場人物の社会的な立ち位置、その役割、性格、過去の出来事などの内容を整理したワークシートを作成することが重要になります。ワークシートの作り方はなるべく登場人物によってイメージしやすいキャラクターをイラスト化するなど、表現方法の工夫が大切です。作成したワークシートを確認しながら文章を読み進め、後にある設問を考えることで、読解における思考力がまとまってくるはずです。これは言語領域のワーキングメモリに負担をかけず、視覚からの認知の強みを利用することに意味があります。もともと回りくどい言い方や、たとえ、示唆するような言い回しは理解することが難しい子どもたちです。そのイメージを結び付けるパイプの役割を果たす絵カードを使いながら理解を補っていくのです。

認知発達の偏りはお子様によって違いますが、視空間のワーキングメモリが弱い子どもたちには、文章を読み上げてあげる支援が必要となるでしょう。そして絵カードを見ながら具体的な映像でイメージをつくらせながら、ゆっくり文章を読ませていきます。文字の大きさや読む文章の段落を明確になるように枠で囲む等の細かい配慮も必要となります。内容が分からなくなったときは、口頭での説明を加えながら、お子様が理解しやすいようにリードしていきます。

次に時制ごとに絵カードをならべて、文章の構成にあわせて順番を確認していきます。絵カードの対で作成した文章カードをもういちど読みながら絵カードの横に並べてマッチングさせていきます。もう一度、絵カードを見ながら文章を読ませ内容の理解を促せます。次に文章のみを音読させ、最後に絵カードを確認させながら黙読させていきます。

以上のような支援方法を取り入れた小学生苦手特訓コース、または中学生の弱点克服コースのような講座が、夏期期講習で取り組ませていただいた内容の一部になります。

2学期は、講習をきっかけに身に付けた学習習慣が継続できるように、できるところ、できる量を計りながら、無理せず、計画的に、少しずつスモールステップで勉強をすすめてもらいたいと思っています。そのことが継続できれば誰もが、「こんなことができるようになったんだ」「今までできなかった問題が解けるようになった」と気づく日が必ず来ます。そして、そのことが自信に結び付いてきます。

彼らが学校や社会に適応できるための第一歩は、まわりから受け入れてもらおうとする意志力だと私は思っています。その意志力は、このような、少しずつの自信の積み重ね、言い換えれば、成功体験の積み重ねから生まれるものです。

このことを続ければ教科書の問題も必ず解けるようになることでしょう。大切なことは、どうせできないからやってもしょうがないと言う気持ちを持たないことです。そして自信を持って、いまできることを一つひとつ積み重ねてください。