5,お子様の学習のつまずきの理由
さて、新学期になり中学校では2学期制、3学期制問わず10月に学力考査を予定している学校が多いと思います。中学部でも6月下旬に期末試験が実施されました。発達障害があるお子様においては、読むこと、書くこと、計算することが苦手で、どうしても数学や国語、英語の試験で得点が取れない人が少なくありません。書くことや読むことが苦手なお子様方は、社会科の先生に見られるような板書をノートに書き写す分量が多い先生の授業についていけない人たちが多いと思われます。
話すことが苦手な人は、順番に答えさせられたり、頻繁に指されて答えを求められたりする授業だと緊張してしまい、精神的な負担が大きくなっている人たちも少なくないでしょう。書くことが苦手な人たちは、教科書ワークを消化することだけでも学習が覚束なくなり、期末テストの勉強まで手がつかない人たちも少なくないでしょう。一度テストに苦手さを感じてしまうと、高校生になっても試験を拒絶してトラウマになっているお子様もいます。
中学部に在籍している生徒の皆さんは、漢字が覚えられない、英単語が覚えられない、計算が苦手、繰り上がり繰り下がりの計算ができない、図形やグラフの問題がさっぱりわからない、数学の文章題が溶けない、黒板の字を書き写すことが苦手である、授業中の先生の説明が頭に残らず理解できない、授業中に先生に指されても頭に浮かんだ答えが言葉として伝えられない、長い文章を読むことや理解することができない等、学校の授業についていくことができずに学習的無気力になり、成績が伸びず、学習面での困難さがあるお子様がほとんどだと思います。
一人ひとりのつまずきは、学習面において教科や分野の中でできない課題がそれぞれ違います。計算を得意としている人も図形やグラフの計算は苦手であることがあります。その一つとして、文字や記号を認知(情報を処理する力)する言語的理解の優位性や空間的認知の優位性などの偏りが起因していると考えられています。
国語の場合でも、文章を読み取り理解する読解力は高いのに、漢字を覚えることが苦手であったり、語彙を的確に使いこなすことが出来なかったり、考えを文章にしてまとめることが出来なかったりする人は少なくありません。国語の読解は視覚的な認知力だけではなく、自閉症スペクトラム傾向の人たちに見られる「心の理論」と言われる、相手の立場や気持ちになって他者を理解しようとする力が弱いことで、筆者の考察や主人公の気持ちの移り変わりが分かりづらい特性があります。ましてや、細かい文字を認識したり、記憶したりすることに苦手さがある人の場合、余計に文字を飛ばして読んでしまう、段落を飛ばして読んでしまう等の困難さが生じて、文脈がつかめないことがよくあります。固有感覚のバランスが悪い人は、字を書くことにも困難さを生じる場合があります。
算数の分野では、空間的な認知が弱いことで、立体の平面図を立体として想像することがイメージできないため、立体図形の体積を計算することが苦手なお子様や、数の大小、重い軽い、長い短いなどの比較が感覚的に苦手なお子様は、概数の計算のみならず、小数や分数の計算にもつながってきます。また、置き換えて考えることが苦手なため、グラフや表の読み取りや文章題も苦手なお子様が多いのです。小数や分数、割合など全体を1(一つのまとまり)として考え、数が示す位置や範囲を考えることが苦手なお子様は、水溶液の濃度の計算が理解できません。
2学期は、夏期講習で定着した基礎的な知識が自信となり、学習習慣が継続できるようにできるところや、やることのできる量を計りながら、無理せず計画的に少しずつスモールステップで勉強を進めてもらいたいと思っています。そのことが継続できれば、誰もが「こんなことができるようになったんだ。」「今までできなかった問題が解けるようになった」と気付く日が必ず来ます。そして、そのことが自信に結び付いてきます。
彼らが学校や社会に適応できるための第一歩は、周りから受け入れてもらおうとする意志力だと私は思っています。その意志力は、このような少しずつの自身の積み重ね、言い換えれば、成功体験の積み重ねから生まれるものです。
大切なことは、「どうせできないから、やってもしょうがない」と言う気持ちを持たないことです。そして、自信を持って、今できることを一つひとつ積み重ねてください。