5、発達障害と不登校の関連性
今回の統計にある不登校児童生徒について学校側が把握した事実では「やる気が出ない等の相談があった(30.1%)」「生活リズムの不調に関する相談があった(25%)」、「不安・抑うつの相談があった(24.3%)」は、発達障害傾向の児童・生徒に見られる特性的な状況でもあると私は感じています。
自閉スペクトラム症の人たちは、特性を周囲に理解してもらいにくく、いじめ被害に遭う、一生懸命努力しても失敗を繰り返すなどのストレスが募りやすいため、身体症状(頭痛、腹痛、食欲不振、チックなど)、精神症状(不安、うつ、緊張、興奮しやすさなど)、不登校やひきこもり、暴言・暴力、自傷行為などの「二次的な問題(二次障害)」を引き起こしやすいといわれています。自閉スぺクトラム症は病気というよりは生まれ持った「特有の性質(特性)」と考えるのが良いと言われるようになってきました。
彼らは何か困難さに遭遇した場合にその困難さから逃避してしまう傾向があります。また、上記したような傾向があるため不安を感じやすく、二次的な精神疾患を起こしやすい傾向があります。そのようなことから自己肯定感が低く、意欲的ではない状況が継続している子どもたちが多いように思います。また、自己評価が高い(プライドが高い)子どもたちが多いことも特徴なので情緒が安定しない傾向があります。ADHD傾向の子どもたちに見られるような衝動的な傾向は暴言・暴力、自傷行為に直結します。また不眠や頭痛、腹痛は自律神経に起因するケースも多く見られ、緊張、興奮などを繰り返すことで鬱傾向の心の疾患が発症してしまうケースも珍しくありません。「生活リズムの不調に関する相談があった(25%)」もそこからつながるケースや、こだわりや興味の偏りなどの特性からゲームなどに没頭してしまい生活リズムを崩してしまうケースも報告されています。
「いじめを除く友人関係をめぐる問題」も、発達障害傾向の児童生徒に共通するつまずきである社会不適合や、コミュニケーション障害が起因して人間関係がうまく構築できないなどの特性に関係した人間関係のトラブルのことであり、学校内で孤立したりクラスメートや学校内の生徒とのコミュニケーションの行き違いによる摩擦やトラブルのことであると考えられます。そして「いじめを除く友人関係をめぐる問題」で悩んでいる子どもたちのほとんどは、疎外感やいじめに近い被害者感情を抱えていると思っています。相手のからかいやいじりに冗談で返せず、相手に対する緊張から相手から何かされてもリアクションができません。また、ワーキングメモリが弱い生徒児童は思い浮かんだ感情を言葉にすることができないことでストレスを抱え込んでしまうのです。
このことは、いじめの対象が発達障害傾向のある子どもたちに集中してきことを示す一つの大きなデータであると私は解釈しています。そしていじめの内容に関しても「からかいやひやかし」「ネットいじめ」等のなかなか露呈しにくいいじめが風潮になりつつあり、教職員が気付かないケースが80%を示す中、このような調査では分かりにくい面が非常に大きくなっているように思います。そして、ますます発達のつまずきのある児童生徒のいじめは拡大するでしょう。
それは、加害者側の意識といじめを受けている被害者側の意識が大きくかい離しているからです。発達障害傾向がある子どもたちが今までどのような精神的負担を受けながら学校生活を過ごして、それにより精神的な不安定さが生じているのかを教職員が理解して彼ら側になって対応を考え、いじめと感じる行為を受け続け悩んでいる発達障害がある子どもたちの臨床を通した理解が早急に進むことを期待します。
2学期は学校行事が多い時期でもあるので、子どもたちも緊張する場面が多くなり学校でのトラブルも多くなりやすい時期です。先述したように、最近小学生の子どもたちで不登校になってしまう割合が徐々に増えているようです。発達のつまずきで生きづらさがある子どもたちは、10月、11月は要注意です。保護者の方々はお子様方の様子の変化を見逃さないようにしてください。学校の先生方もとても忙しい時期になるので、子どもたちのトラブルやいじめなどで悩んでいる子どもたちを見逃しやすくなります。秋は不登校になる子どもたちが多い季節なのです。