高等部:高等部通信8月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-3

3,授業におけるユニバーサルデザイン

自然学園は通信制高校の技能連携施設の認定を受けています。ですから授業に出席することが単位の認定に結び付きます。自然学園高等部の学習はそれぞれの学習でのつまずきに配慮しながら現在の学習到達度に沿った学習課題を授業で進めていくことが基本になります。自然学園に在籍している生徒の皆さんは、認知機能の強みや弱みの凸凹があることによって授業に参加することが難しく、学力の低下につながっています。WISC-Vの知能検査によって把握し、それによってつまずきのポイントや学びの特徴を押さえた有効な教え方を提示することが可能になります。「つまずきのポイント」と「学び方の特徴」がわかります。

ワーキングメモリは作業や動作に必要な情報を一時的に記憶・処理する能力です。

その能力は目で見たことを覚えたり、目にしたものを理解したり、目で見た情報をもとに適切な答えを推理するなどの視空間のワーキングメモリと、聞いたことを覚える力と聞いたことまたは文を読んだ音を聞くことと同じように言語として理解したり、聞いたり読んだりする情報をもとに整理しまとめる能力や適切な答えを推理したりする言語的ワーキングメモリがあります。具体的には板書を書き写す力などの能力は、視空間的短期記憶と言われる目で見たことを一時的に保持できる覚える能力であり、視空間性ワーキングメモリと言う見た情報を処理する能力は図形の平面図(展開図)を立体として考え、立体の完成形を想像できる能力であり、ダンスやラジオ体操を模倣して覚えることにも必要な能力です。また言語的短期記憶とは聞いたことを覚え理解する能力で、人の話を聞くことや口頭からの指示を理解する能力などです。言語性ワーキングメモリと言われる音声情報を処理しながら保持する能力で作文、文章読解、算数の文章題はもとより話し合いなどに必要な能力なのです。

自然学園高等部の生徒の皆さんは小学校や中学校の授業に参加できずに、板書が書けないことでノートが提出できなかったり、先生の口頭での説明が理解できなかったり、演習問題の解答を求められても答えることができないことは上記のつまずきに起因しているケースがほとんどです。授業に参加することができれば授業がわかってきます。それは学習意欲に直結し学力に結びつきます。

このようなお子様方が授業に参加するためには、それぞれの認知の発達の凸凹にあわせたきめ細やかな配慮が必要になります。自然学園高等部ではそれぞれの困難さをできるだけ配慮したユニバーサルデザインを支援の中心においています。学校におけるユニバーサルデザインとはどんな障害やつまずきがあってもクラスの授業に参加して授業が理解できるための教室環境の改善や視覚的な支援を指しています。入学した新入生の生徒の皆さんには、皆さんが理解できる授業を心がけていきます。自然学園で実践している、これらから実践することが可能な支援は以下の通りです。

(1)「見ること」「読むこと」が苦手な生徒のための支援(視空間のワーキングメモリの問題や眼球運動障害などのつまずきがある人)
①レポートの取り組むべき課題の箇所を限定して掲示する
②問題を解法するために必要な取り組むべき手順を明記したメモを横に置いて、確認しながら課題に取り組んでもらう
③プリント(ワークシート)を作成する際にワーキングメモリを補うメモやヒントを書き込める欄を目につく目立つ箇所につける
④文字を大きくしたり、ゴシック体にしたり、文章の下に定規など文字を強調できる付箋等の補助器具を下に置く。アプリや文字の拡張機器を使って文章を取り込み拡大や文字の強調、色付けするなど教科書やプリント(ワークシート)の文章を補助する工夫を取り入れる

(2)書くことの支援(視空間のワーキングメモリの問題や発達性協調運動症のつまずきがある人)
①文字をかたちづくることに役立つ補助線やマス目がある解答欄を大きくつくる
②タブレットを使用して解答欄への解答は、打ち込みでの入力を可能にする。
③なるべく書き込みではなく、記号や選択肢での問題に出題を変更する
④口頭で答えられた解答の正解を見ながら、正しく解答欄に記述する

(3)勉強に取り組むことの負担を軽減させる支援(1,2の共通したつまずきのある人)
①シャープペンシルなど力を入れると芯が折れ、芯を取り替えることも不器用が強い人は、時間を要する筆記用具を極力さけ、力を入れなくても記述できる太く、濃い鉛筆を使用してもらう
②消しゴムを消す事にもストレスが強く負担が掛かる子は、消しゴム係をしてあげる。またはタブレットのノートアプリを使用して「戻る」「ディレイト」をタップして,間違えを消去できる事を教える
③取り組む課題を限定し、学習に対する心理的負担を軽減させる。現在の学力に対応できる課題を提示する。簡単に解答できる問題から徐々に難易度を上げていく課題構成の工夫をする。最後は解答出来て課題を終える事が望ましい➡それぞれのつまずきや課題に合わせた習熟度別クラス編成を導入。+ クラスごとの学力考査の実施。
④解答のヒントになるような視覚的な手がかりや言語的手がかりを必ず用意してあげて、声かけによって上手く解答手順で進めていっている事を声かけで伝える
⑤集中が続かないようなら休み、代用行動として、体を動かすような課題を学習プログラムに入れる➡リソースルーム、個室リソースルーム、保健室の常設

(4)勉強できる環境を整える
①聴覚過敏があり教室のザワザワ感や他者の言動が気になる生徒にはパーテーションでの対応で不安や緊張の緩和を実践。
②無理ないスモールステップで受講を限定した個別の支援計画の実施(3段階のスモールステップの実践)
③生徒ひとり一人に合わせたプログラムによる学習支援の導入
④その日のやる授業内容を最初に説明し学習の順番を明示する
④オリジナルテキストプリントの拡充
⑤「読む」「書く」「聞く」を補助するタブレット、アプリの使用