家庭でのキャリア教育とも言える家庭で実践できるSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)や、具体的に、ソーシャルスキルがお子様とどのような関わり方、育て方から育まれるのか、そこで育まれたスキルは働く力とどう結びつくのかを、今回、定期講演会の講師としてお願いした松為信雄先生の著書である『発達障害の子どもと生きる』の内容からかいつまんでいくつかご紹介させていただきます。
ルールやマナーを守れる人になるために、家庭で実践されている家庭内の仕事を役割として任せ、そのことを家庭内のルールとして本人が納得した上で実行されることが、実践できるSSTとしてよく言われています。そのルールを家庭で徹底させるために、よくありがちな対応として決められたルールを視覚的に提示したりすることがありますが、抽象概念が発達していない発達障害の子どもたちは、禁止事項だけを構造化され、貼り出されて規制されても、禁止事項における「具体的に何をしたらよいのか」のイメージができない人が多いのです。例えば「部屋を汚さない、部屋を片付ける」というルールなら、禁止事項を貼り出すより、「遊んだあとは決められた箱に定めた遊具をしまう。」「本・漫画はAの棚の定めた場所にしまう。」などの片付けの手順に従い視覚的に構造化した方が、はるかに本人がルールを守りやすくなります。
また、学校でのルールとして「廊下を走らない」という禁止事項がよく壁に貼られています。実際に実行できる方法としては、禁止事項を提示するより「廊下を歩く」を視覚的に構造化して、歩く速度(前の人を追い越してはダメ)や歩くポジション(廊下の左側)などを明記して正しい廊下の歩き方を教えることが「廊下を走らない」を守らせることにつながる、より効果的な方法になるのです。このようなことに注意してご家庭で守らせたいルール、やらせたい役割分担を増やしていくことをご提案します。そして、決められたルールが守れなかった時に、自分の過ちを認めるスキル(自ら謝罪できるスキル)を次に教えてください。問題行動があった時に、自ら言い訳を言わせるのではなく、言い訳が出尽くすほど質問を本人にくり返し問うのです。本人の言い分を聞いて、叱る理由を親から説明するのは、問題行動を自ら悟り認めた後にしてください。子どもが自ら謝罪した時は、きれいさっぱり許す。人に許される経験がないと、人を許すスキルが育たないと考えます。自分に非があったこと、そして謝罪に至る経緯を自ら認めることが本当の意味での謝罪であることを定着させることが重要です。自分の主張を謝罪の後に付け足すのではなく、「最初はこう思ったが、私のこの様な行動がすべて悪かったのです。」という謝罪を身につけさせる。とってつけたような謝罪はさせないことが誤学習につながることを防ぐ方法です。
最後に、自己決定力を高めるSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)として、なるべく早い時期から自分でできることは本人に実践させることを心がけてください。保護者に頼らず自分自身で責任を持ち、自分のことは自分の意思で決定させることが自己決定力の育成につながります。保護者はその決定を見守り、支えて行くことに徹することが大切です。
また、お使いを任せたら、購入する商品やサイズは指示を出さずに自分で判断させ、あとでその商品を購入した理由を聞くこと、病院など自分一人で行けるようにしておき、自分の症状を自分で説明できるようにする。服薬を自分で管理させること。学校、習い事への送り迎えはせず、自分で行き帰りに道を選択し、一人で行けるようにする。傘が必要かどうか、学校に携帯するかどうか自分で判断させる。季節や気温に適したその日来ていく衣服の選択を自分で判断させる。自分の欲しいものの欲求は言葉で明確にお願い、要求することを習慣づける。購入して欲しいものは、その理由を話せるように習慣づける。このような日常の何気ないお子様との関わり方に気を付け、意識することで、驚くほど自立するために必要案スキルが育まれるものです。
高等部で実施しているSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)の授業の目的も社会に参加するために必要とされる人との関わり方やルールを学び、コミュニケーションおよびアサーションスキルを向上させていくことにあります。将来お子様が働くうえでも必要となる重要なスキルがソーシャルスキルです。有益なSSTをすすめるためには一人ひとりのお子様の特性を理解することが必要になってきます。家庭での理解も大切な要素になります。家庭でのご両親との関わり方などの環境がお子様の成長に大きく関係してきます。高等部のSSTは、保護者にお子様の特性を理解してもらい、より良い行動を多くするための適切な対応を学んでいただく授業でもあります。