子どもが愛着障害と認められた場合にまず行うことは、安全基地の形成です。子どもとの間で愛着がしっかりと築かれることで、子どもは養育者のことを安全基地、すなわち困った時・不安や恐怖を感じた時に守ってもらえる拠り所として認識するようになります。愛着障害の子どもは養育者を安全基地と見なせていない場合がほとんどです。そのため、子どもに「養育者=安全基地」と認識してもらえるように、親族や、かかりつけの医者など、まわりの人々が親子を支援していくことが必要です。安全基地の形成が足がかりとなって、子どもの人と接することへの安心感や信頼感を生み、他の人との接し方・距離感も改善することができます。また、子どもが愛着障害を発症するということは、養育者や家族も何らかの支援を必要としていたり、問題を抱えていたりする場合も少なくありません。その場合、子どもだけに治療の焦点を当てるのではなく、養育者や家族を含めて幅広くアプローチを行うことが必要だとされています。
例えば、虐待が原因の場合は子どもと養育者の距離を一回遠ざけてみたり、親へのカウンセリングや心理療法的・家族療法的アプローチを取り入れたりすることで、子どもの愛着障害の改善につながることがあると言われています。
最も大切なこととして、幼少期に満足に得られなかった、愛着形成のための愛情深いスキンシップやコミュニケーションを補ってあげることが挙げられています。そして愛着障害は「鬱」だけではなく「心身症」「不安障害」「境界性パーソナリティ障害」などの精神障害の原因ともなります。そして発達障害の特性と同じような症状がみられることがわかっています。
愛着障害は子どもに発達障害があると母子関係が形成しづらく愛着の問題を抱えやすいと一般的には言われています。このような子どもは成長過程で発達の歪みを生じやすく、問題行動が多くみられ、学校環境の不適応などの経験から複雑性PTSDを抱えているケースが家庭環境以外の要因でも少なくありません。そのような子どもが大人になると対人関係がうまくいかない。情緒が不安定であり、アイディンティティの確立が困難で自分で人生の選択の場面で進路などの決定ができないといったつまずきを抱えるようになります。複雑性PTSDは、時に統合失調症や境界性人格障害などに間違われやすい症状が見られるケースがあり、診断名が非常につきにくい状況が多いと思います。誤診されたケースでは間違った薬を処方され、症状が悪化したケースもあります。
愛着トラウマを抱えた人は虐待や搾取を繰り返す親やパートナーさえも離れられず、見捨てられることへの強い不安があり、依存性が強く、1人では生きていけない思い込みが強いことが特性です。そしてトラウマの苦痛から逃げれば逃げるほど強まってしまうのです。
愛着トラウマの改善は、自分にかっこつけるのではなくみっともないこともさらけ出せることが強いと思えるようになった時に逆転が始まるとのことです。愛着の課題を抱えている人は極端な二分法的思考が潜んでいるケースが多く、思考がゼロか百になりやすく両極で短絡的な認知の仕方をし、強固な自己否定があるようです。だからこそ大切なことは過去にとらわれずに自分が選択し、自分が望んだ人生を歩んでいくことであるとしています。
苦しいことから回避しようとすることで解離のような症状があるケースや、境界性人格障害の症状が共通する場合がありますが、自傷行為や自殺企図が繰り返すような境界性人格障害の特性はなく、フラッシュバックや悪夢などを繰り返すケースが複雑性PTSDでは多いとしています。家出や記憶障害もその特色であるとされています。いままでASD(自閉スペクトラム症)や統合失調症、解離性人格障害などと診断された人のなかに実は愛着トラウマでの症状であるケースも多いのではないかと思い当たるケースがいくつかあります。