自然学園大学部の就労への3段階のスモールステップ-大学部通信より-

現在は通信制高校の入学者は特別支援教育を必要としている人たち(通常級で通級を利用していた生徒)や不登校を経験していた人たちや高校をさまざま理由で中退してしまった人たちです。自然学園大学部はそのための3段階のスモールステップを採用しています。

自然学園大学部では入学した学生の現状および入学に至る動機やそれまでのキャリアなどをアセスメントし、それぞれの短期、中期、長期の目標設定に応じた個別の支援計画を立案します。一般就労を実現するためには企業実習が必要になります。まずはそこを目標にし、3段階に支援プログラムを提示させていただきます。精神的な回復が当面の課題である学生を対象に、「自己肯定感の回復」「社会適応」「2次的な障害の回復」を目標とする学生プログラムを1段階目のステップ1とします。社会生活や、働くうえで必要なコミュニケーション力、社会性などのソーシャルスキルの獲得を目標とする学生プログラムを2段階目(ステップ2)とします。そして企業の実習を重ね具体的な業務や業種における適性や企業風土などから就職活動先を絞ることの実践ができる学生プログラムを3段階目(ステップ3)としています。ステップ1の到達目標は自己肯定感を高め、就労意欲を回復することにしています。学校生活における居場所づくりやソーシャルスキルの向上や情緒の安定のためのセルフコントロールを課題にしています。ステップ2では企業に求められる必要不可欠な「報・連・相」やビジネスマナー、業務スキルの習得が課題になります。ステップ3は企業での採用を実現できる実習における業務スキルの獲得や余暇スキルも含む社会生活の実現を視野に入れた課題設定を最終的な目標課題にしています。

リモートでのテレワークの就労以外は毎日の出勤が働くことの基本です。就労を希望する生徒は障害者就労の場合は企業での実習が必須になります。そのためにも不登校を経験した生徒は時間をかけて登校することに慣れることが目標になります。そしてクラスの中に自分の居場所があれば人とつながる力が生まれます。それこそが社会参加に必要な社会性の原点なのです。

「働くためのスキル」とは、どのようなスキルなのか?どのようなことができれば企業が求める能力を満たすことができるのか?その能力を業務の遂行力だと勘違いされている人は多いと思います。仕事は入社してから覚えればいいのです。そんなことより重要なことは職場の適応力です。その力は職場での自分の役割を担う力であり、個人の自己決定力なのです。この力があれば、これからの人材不足を充分補って余りある能力が彼らにあると企業は考えているからです。

ソーシャルスキル(社会的スキル)とは、後天的に学習する能力であり、それを学習することがソーシャル・スキル・トレーニングです。ソーシャルスキルは社会的場面における対人目標を達成するために行われるもので、対人面において社会的ルールや相手の行動をイメージし、合理的に行動できる力を指します。ソーシャルスキルとは、言語だけではなく、表情や身振り、手ぶりなど非言語的なものも含みます。正しく実社会で必要とされる能力であり、企業就労はこの社会的スキルがなければ成立しないものです。ソーシャルスキルは学習性の能力なので、それが身についていない場合、発達障害があるからソーシャルスキルが身につかないのではなく「適切なスキルの未学習」「適切なスキルの誤学習」と考えることができます。

ルールやマナーを守れる人になるためのよくありがちな対応としてきめられたルールを視覚的に絵で提示したりしても、抽象概念が発達していない発達障害の人たちは、禁止事項だけを構造化され、貼り出されて規制されても、禁止事項における「具体的に何をしたらよいのか」のイメージができない人が多いのです。

たとえば「部屋を汚さない。部屋を片付ける」のルールなら、禁止事項を貼りだすより、「遊んだあとは決められた箱に定めた遊具をしまう。」「本・漫画はAの棚の定めた場所にしまう。」などの片付けの手順に従い、視覚的に構造化した方がはるかにそのルールが本人にとって守りやすくなります。自己決定力を高めるSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)として、なるべく早い時期から自分でできることは自らの行動で本人に実践させることが重要です。

大学部で実施しているSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)の授業もその目的な社会に参加するために必要とされる人とのかかわり方やルールを学び、コミュニケーションおよびアサーションスキルを向上させていくことにあります。働くうえでも必要とされる重要なスキルがソーシャルスキルです。有益なSSTをすすめるためには一人ひとりの学生の特性を理解することが必要になってきます。